妖のおはなし:置池堀(第十二話)

置行堀 所在地:東京都墨田区錦糸町、堀切、埼玉県川越市
置行堀は本所七不思議の一つに数えられてます。
そのお堀は錦糸町辺りにあったとされ、魚が入れ食いで面白い様に釣れ帰ろうとすると堀から「置いてけ〜置いてけ〜」と声がする・・・というお話です。ここから先なのですが実は色々なパターンがありまして「怖くなって魚を逃す」「驚いて逃げ帰ると釣ったはずの魚が無い」「置いてけ〜と堀から白い手が出てくる」などなどのお話に続いていきます。その正体も堀に住む河童の仕業だとか、三代目歌川国輝は幽霊の様な妖怪を描いてますし、狸の仕業だとか、本所七不思議の全ては狸囃子の狸の仕業であるとも言われてます。
さて、本所七不思議ですがこの置行堀(おいてけぼり)以外にも、狸囃子(たぬきばやし|別名:馬鹿囃子)足洗邸(あしあらいやしき)、片葉の葦(かたはのあし)、送り提灯(おくりちょうちん)、送り拍子木(おくりひょうしぎ)、燈無蕎麦(あかりなしそば|別名:消えずの行灯)、津軽の太鼓(つがるのたいこ)、落ち葉無き椎(おちばなきしい)・・・この七不思議は当時の都市伝説の様なものなので伝わっている話によって怪異が違うようで、そのため7つ以上の不思議として伝わってます。
妖ばなしで「のっぺらぼう」が人を脅かす話がありますが、これは柴田宵曲「再度の怪」、山田野理夫「重箱ばば」或いは妖怪の「朱の盆」の様な二度脅かすパターンの話がモチーフになってますが、中でも怪異で最も有名なのが小泉八雲の「狢(むじな)」です。
この再度の怪の「のっぺらぼう」は本所七不思議の話の中で「置行堀」と組み合わされます。「置いてけ〜」と言われてびっくりして蕎麦屋に駆け込んだら主人の顔がのっぺらぼう(おそらくこの蕎麦屋の屋台も燈無蕎麦)驚いて家に帰れば自分の妻ものっぺらぼうだった!という話。英語の教科書 Long long ago,there was a long slope in the city of Edo.の一文で懐かしいと思われる方も多いかと思います。
また錦糸町以外にも堀切にもあるとか埼玉県の川越にも「置行堀」はあったとされます。勿論、置き去りにされた「置いてけ(き)ぼりを食った!」の語源でもあります。(妖ばなし文芸部/文責:杉本末男(chara)・イラスト:けんじゅー)

「置池堀」の話はDVD妖ばなし第四巻に入ってます!